2017-01-01から1年間の記事一覧

「体の贈り物」 レベッカ・ブラウン 著

私たちは、この世で生きているつかの間、他者と視線を交わし、言葉を交わし、触れ合って、そうやって最期まで互いの体を通じて「贈り物」を交換することができるのだ。 先日発表されたスマホの新型機は顔で認証する機能が付いているとか。 ただでさえ一日中…

「浪費図鑑 ー悪友たちのないしょ話ー」 劇団雌猫

彼女たちは、それを浪費ではなく「愛」と呼ぶ。「タガが外れる」という言葉がある。 何かの拍子にリミッターが解除され、欲望や感情が暴走し理性が吹っ飛んでしまうこと。 本書は、この「タガの外れ」具合を、ある対象につぎ込んだ「お金」の多寡によって計…

「誰が音楽をタダにした?」 スティーヴン・ウィット 著

音楽はかつて、宝石のように希少価値のある貴重なものだった。最近、音楽は「聴く」というよりもなんだか「消費する」と言ったほうがしっくりくる。 私の子どもの頃は「好きな音楽を聴く」ためには、その歌手が出演するテレビやラジオ番組をチェックし、家族…

「市立ノアの方舟」 佐藤 青南 著

さまざまな制約の中で環境に適応しながら生きようとする動物たちのたくましさに、逆に人間たちが知恵やエネルギーを与えてもらっている。生きるものは皆、健気だなあとしみじみ思う。このところ、興味をひかれるままにインターネットやAIに関する本や記事ば…

「神は背番号に宿る」 佐々木 健一 著

数字には魔法があり、それによって喚起されるドラマがある。 数字には魔法があり、それによって喚起されるドラマがある。 たとえば「0(ゼロ)」の起源やその哲学的存在感などを見れば、まさに魔法!という感じがするし、古今東西ひとが好むさまざまな占いの…

「アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅」 フィードラ・パトリック 著

人生に発見を、偶然を、ハプニングを、新しい出会いを!そしてそれらを受け容れ、違う世界に踏み出す勇気ある一歩を。本書の主人公は、40年以上添い遂げた伴侶のミリアムを亡くし、毎日のルーティンワークに埋没することでなんとか生きている69歳のアーサー…

「四人の交差点」 トンミ・キンヌネン 著

この家には、伝えなかった言葉があり、使われなかった拳銃があり、燃やされた手紙があり、家族にさえ言えない秘密がある。これはフィンランド北東部の小さな村の増築が繰り返された不恰好な家に住む、ある家族の物語。 この家には、伝えなかった言葉があり、…

「死してなお踊れ 一遍上人伝」 栗原 康 著

いいよ、いいよ、すくわれちゃいなよ、いますぐに。なんだかここ数日慌ただしい危機感にあふれたニュースがそこら中で氾濫している。 のんびりとした日々の雑感や日常のユーモア、ドラマの感想などが大部分だった私のTwitterのタイムラインにも物騒なツイー…

「コードネーム・ヴェリティ」 エリザベス・ウェイン 著

第二次世界大戦の最中、イギリスから一機の飛行機がフランスに向けて飛び立つ。月明かりの下、乗っているのはマディとクイーニーという2人の少女。それは2人にとって運命の飛行となる。第二次世界大戦の最中、イギリスから一機の飛行機がフランスに向けて飛…

「死にゆく患者(ひと)と、どう話すか」 明智 龍男 監修 國頭 英夫 著

「そういう文化を創ってしまって、みんなで死を考えることが当たり前というような社会にすれば、それは暗くも何ともなくなるのだと思います。」本書は、日本赤十字看護大学一年生後期の基礎ゼミ「コミュニケーション論」において、進行がんの治療を専門とす…

「ねないこは わたし」 せなけいこ 著

「ねないこ だれだ」。ねないこはわたしだったの。子どもたちが保育園に通っていた頃、寝る前に必ず一冊は絵本を読む約束をした。 そしてその中には本書の著者、せなけいこさんの「ねないこ だれだ」や「いやだ いやだ」、「あーんあん」、「めがねうさぎ」…

「静かな炎天」 若竹 七海 著

20代のフリーターだった葉村晶も40代となり、ついに本書では四十肩に。読者も一緒に年をとる人気シリーズ。できれば最後まで伴走したいと思っているのだが。 本書の主人公、葉村晶(あきら)は、1996年から現在まで、著者の短編、長編作品で活躍しているシリ…

「これからお祈りにいきます」 津村 記久子 著

この世は人の願いと祈りが複雑に絡み合っている。人が自分の体の一部を犠牲にしてでも叶えたい願いとはなんなのだろう。中編2作が収録されている作品集。「サイガサマのウィッカーマン」 「ウィッカーマン」とは古代ガリアで信仰されていたドルイド教におけ…

「貧乏人の経済学」 A・V・バナジー 、 E・デュフロ 著

最近、仕事の関係でたびたび「貧乏人は努力が足らない、自己管理能力が低い」というもっともらしい言葉を述べる人と出会うので、検証と反論のために読んだ。 本書は「経済学」という題名ではあるが、単純な分析や学術的な論考ではなくて、食糧や医療、教育、…

「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」 吉永 南央 著

「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ、第4弾。今回は、個人経営の電器店や手芸店など大手スーパーやネット通販に押され寂れていく一方の小さな商店街を舞台に人が変わらないでいることの難しさと、あえて変わろうとする勇気を描いている。「紅雲町珈琲屋こよみ」…

「生か、死か」 マイケル・ロボサム 著

10年間、現金強奪事件で懲役刑に服し、それも明日には釈放となる予定だったオーディ。 ところが、彼は出所予定の前日、誰にも理由を告げず脱獄…彼はなぜあと1日が待てなかったのか。 10年前、700万ドルの現金強奪事件が発生し、犯人4人のうち2人は射殺、…

「ブルックリン」 コルム・トービン著

なぜ人は一つの道しか選ぶことができないんだろう。同じように可能性と愛情を感じる選択肢があったとして、それを両方選ぶことはなぜできないんだろう。 なぜ人は一つの道しか選ぶことができないんだろう。 主人公アイリーシュの生真面目さと人生の一回性に…