2020-01-01から1年間の記事一覧

「理由のない場所」イーユン・リー 著

16歳で自ら死を選んだ息子と言葉を交わす場所。 そこは、言葉によって新たな生命を与えられた彼と、交わることができる唯一の場所。 本書は、母である著者がそこで彼と交わす会話を、彼が亡くなった年齢と同じ16の章に分けて綴ったものだ。 もちろん、亡くな…

「死亡通知書 暗黒者」 周 浩暉 著

中国でシリーズ累計120万部突破、ドラマ版は24億回再生という超人気の華文ミステリ。 1人の刑事が予告殺人鬼<エウメニデス>に殺された…そこから始まる連続殺人事件。 <エウメニデス>はネットで次の犠牲者の候補を募り、衆人監視の中、驚くべき手口で…

「ベル・カント」  アン・パチェット 著

世界が美しいのは私たちの生が永遠ではないから。 そして次の瞬間には消えてしまうから歌はあれほど魂を揺さぶるのだ。 ベル・カント (ハヤカワepi文庫) 作者:アン パチェット 発売日: 2019/10/17 メディア: Kindle版

「名もなき人たちのテーブル」 マイケル・オンダーチェ 著

昨秋、思いかけず一週間の船旅をすることになり、ワクワクしながら船を舞台にした小説を探した。 読むんだ!読むんだ!船のデッキで!潮風に吹かれて。 豪華客船での殺人事件、幽霊船との遭遇、嵐で遭難…なかなか面白そうな本が集まった中で、結局どっぷりハ…

映画「プリズン・サークル」

「プリズン・サークル Prison Circle」(坂上香 監督)というドキュメンタリー映画を観た。 罪を犯した者たちが丸く椅子を並べて、自身の犯した事件について、被害者について、互いに質問し合いながら重い口を開く。 その語りが積み重なるにつれ、彼らが自分…

「急に具合が悪くなる」宮野真生子、磯野真穂 著

本書は哲学者である宮野真生子さんと人類学者である磯野真穂さんという2人の学者の間で交わされた2ヵ月間(2019年4月27日の磯野さんの第一便から同年7月1日の宮野さんの第十便まで)の往復書簡を収めたものである。 女性2人の往復書簡と聞けば食べものや旅行…

「家庭の医学」 レベッカ・ブラウン 著

母親が病を得て亡くなるという経緯を「貧血」「転移」「嘔吐」「モルヒネ」などの医学的な用語の付いた章ごとに語られ、体裁はそう、まるで医学書のようでもある。 「家庭」という真綿に包まれたような曖昧で温かな空間に、突然「医学」が入り込んだ時、家族…