2012-01-01から1年間の記事一覧

「ピエタ」 大島真寿美 著

史実を元に、作曲家ヴィヴァルディの死を緒にして、道標を失って途惑う女性たちの物語。音楽と共にある人生の豊かさと、互いを思いやって生きる女性たちのささやかな幸せを芸術の都ヴェネツィアを舞台に描く。 ヴェネツィアの慈善院付属音楽院であるピエタ。…

「楽園のカンヴァス」  原田マハ 著

アンリ・ルソーの絵画をめぐる真贋判定。ピカソやアポリエールなど実在の人物も絡めつつ描かれる幻の絵画と夢のような7日間の出来事。贋作、二重作品、暗号のトリック…ページをめくる手が止まらない。 冒頭から実在の「大原美術館」の名前が登場。 途端に、…

「痕跡本のすすめ」 【古書 五っ葉文庫】 古沢和宏 著

書き込み、挟み込み、傷、よごれ…前の持ち主の痕跡の残された「痕跡本」と、その痕跡の背後に広がる物語。ゴミ同然の無機質な存在から、著者によって一転、かけがえない存在となった幸福な本たちの紹介本。 中学生の頃、A・クリスティにはまり、毎日のよう…

「フェルメール 光の王国」 福岡伸一 著

「フェルメールの作品が所蔵されている美術館に実際におもむいてフェルメールの作品を鑑賞する」をコンセプトに世界各地を巡る贅沢な美術紀行。生物学者ならではの斬新な視点から、フェルメールの謎に迫る。 この本は、ベストセラー「生物と無生物のあいだ」…

「紅茶スパイ」 サラ・ローズ著

プラントハンター。それは「高度に訓練された鋭い観察力の持ち主で、故郷や家族を顧みず、植物発見の魔力にとりつかれてしまった男たち」のこと。凄腕ハンター、ロバート・フォーチュンが盗み出した国家機密とは? プラントハンター。 それは「高度に訓練さ…

「サラの鍵」 タチアナ・ド・ロネ著

「あとでもどってきて、出してあげる。絶対に」。少女はすぐに戻って来ることができると信じて弟を納戸に閉じ込め、そして収容所に連行された。60年後に開けられたパンドラの箱に隠されていた真実とは…。 東日本大震災の起こった時、私は何かに取り憑かれた…

「FBI美術捜査官―奪われた名画を追え」 ロバート・K・ウィットマン ジョン・シフマン 著

FBI初の美術品専門の捜査官が、数々の事件でいかにして貴重な美術品を取り戻してきたか。危険な潜入捜査のエピソードの連続。今も世界の何処かで眠る美術品たちを巡る裏ビジネスの実態に迫る。 本書は、大事件の潜入捜査の場面から始まる。 1990年、イザベラ…

「ルーズヴェルト・ゲーム」 池井戸潤 著

追い詰められた企業と野球部の手に汗握る戦い、それは大差に追いつくルーズヴェルト・ゲーム。今、私たちが一番見たい逆転劇がここにある。 「野球」と呟いただけでじりじりとした夏の太陽の日差しや砂ぼこりの舞うグラウンド、そして屈託のない笑顔が浮かぶ…

「スリー・カップス・オブ・ティー」 グレッグ・モーテンソン デイヴィッド・オリバー・レーリン著

何事においても最もふさわしい時期があり この世の中のすべてのことには「時」がある。人生最大の失敗の直後に出会った人生最大の目標とその達成までの紆余曲折を描く。 たまたま、出会いについて、そして人が人と共に生きることについて、悩み、考え…

「英国メイド マーガレットの回想」 マーガレット・パウエル著

メイドが本を読むなんて!と言われた1920年代の英国。労働者階級に生まれ、最下層のキッチンメイドとして働き、様々な義務や制約の中で精一杯を生きている主人公の生き方の美しさ、潔さに一気読み間違いなし! 以前、車で山あいの峠を抜けた。 谷間に数軒の…

「コールドケース 未解決事件」 マイケル・カプーゾ著

アメリカでは3件のうち1件の殺人事件が未解決であるという。それらの未解決事件を解決に導くヴィドック・ソサエティという私的諮問機関。その中心となる3人のメンバーの活躍と彼らが明らかにした死者達の声。 600ページ以上の単行本を一気読み。 手に汗握る…

「解錠師 」スティーヴ・ハミルトン著

主人公は17歳。彼が人生の選択肢でいつもいつも危うい方を選ぼうとするたび、違うよ!そっちは危険だよ!と叫びたくなる。だけど、分かっている。そもそもそんな道を選択することが、そしてそれを「後悔していない」と言い切ってしまうことこそが若さなんだ…

「死者の短剣 ー 旅路」ロイス・マクマスター・ビジョルド著

異民族間の相互理解をテーマに歳の差カップルが活躍するファンタジー。全4作の3作目である本作では多彩な登場人物が織りなすドラマと少しづつ明かされいく謎の答えが描かれる。最後まで目が離せない魅力的な作品!シリーズ3作目の本作、前作同様、深い確執…

「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ著

静かな、静かな筆致で数々の「犯罪」とそれに関わる人々を描く。あとがきも残さない作者の意図をどうしても探り出したくなるほど、余韻に溢れた切ない物語。なんて静かな、美しい物語だろう。 扱われた犯罪はどれも血なまぐさく悲惨な事件なのに、それが書か…

「聴く」ことの力―臨床哲学試論 鷲田清一著

「聴く」ことからホスピタリティの真価を探る。ケアの仕事に就いている人、他者との関係性について考えている人は一読の価値あり。人は他者と相互補完的に関わり合うことで自分の存在意義を確認する事が出来るのだ。 子どもの頃から新聞の読者からの悩みごと…

「偶然完全 勝新太郎伝」 田崎健太著 

なぜだろう。失敗もせず人に迷惑もかけず家族を大切にして堅実に生きている人より、大失敗をして人に迷惑をかけ家族を泣かせて人から笑われるような、そんなお馬鹿さんに惹かれてしまうのは。そんな人が愛しいのは。以前見たTVで、オノヨーコがインタビュア…