2015-01-01から1年間の記事一覧
最後に読者はこの作品こそが、彼が読者を罠にかけるために用意した愛しい愛おしいSweet Tooth作戦そのものであることを知るのだ。 本書は女性スパイと小説家を主人公に、複雑にして深い、そして甘い、甘ーい関係を描いた小説である。 著者は「アムステルダム…
世界名作文学の舞台や生誕の地を訪れる文学紀行。初出から50年、改めて名作の魅力を再発見し堪能できる本だ。いま、私と娘の間ではにわかに「世界名作文学」熱が高まっている。 きっかけは本書。 娘が上巻から私は下巻から読み始め、 早速影響を受けて娘は「…
読んでいると、あの時に感じた不思議な「大丈夫」という気持ちを思い出す。 晶文社の「就職しないで生きるには」シリーズの一冊。 著者の森岡督行さんは、大学卒業後、約1年間ほど「社会」と距離を置きながら神保町で散歩と読書にいそしみ、その後、老舗古書…
「完全は不完全があってこそ成立する」 生まれつき耳の不自由な男性バルフィ。 インドのダージリンに住む彼は、ある日街にやって来た美女シュルティと偶然出会い恋をする。 喋ることのできない彼は、ジェスチャーや豊かな表情を使って、あの手この手で彼女に…
「猟犬」は、とき放たれ、証拠をかき集め、犯人を追い詰める捜査官たちを象徴している。その猟犬の中に、もし誤った証拠を集めた者がいたとしたら?裏切り者がいたとしたら? 最近、ミステリ界では北欧ミステリが流行しているようだ。 スウェーデンのヴァラ…
本当に素晴らしいのは、叶うかどうかも分からないもののために覚悟を定めて過ごしてきた彼らのそれまでの毎日なんだ。 昨年は大学生の就職活動、いわゆる就活を間近で見る機会があった。 筆記試験や適性審査、場合によっては5回、6回にも及ぶ面接試験。 理…
本に勝手な物語や感傷を押し付けて執着する人間の身勝手さ。本は読まれてナンボだと思うのだけど。以前ある郷土史家の自宅にお邪魔する機会があり、庭にかわいいお地蔵さんがいるのを見つけた。 路傍にいるよりもずっと綺麗な姿で、手入れの良い庭にまるで装…
「創造する企業はけっして進化を止めてはならない」ピクサーは「変わり続ける」ことで成長し続けるのだ。 昨年末「ベイマックス」が公開されたが、ネット上では映画の公開直後から好評コメントがあふれ、「日本のアニメは終った」という極端な意見まで散見さ…
難破しかかっているのは私たちだったのだ。 ここのところ、誘拐事件の報道が毎日のように流れ、その度に思い出していたのはサン=テグジュペリの「人間の土地」のことだった。 飛行中にサハラ砂漠に不時着したサン=テグジュペリと同僚は渇きに苦しめながら3日…
百貨店の外商部を舞台に、モノを売ることの難しさと喜びにあふれたお仕事小説。本書の主人公、鮫島静緒(さめじましずお)は、富久丸百貨店の神戸芦屋川店で初の女性外商員として抜擢され、日夜「リッチ層」ーいわゆるお金持ちを相手に奮闘している。 しかし…
子どもが大人に成長するのもたいへんだけど、人が「いい親になる」ということも本当に本当にたいへんなんだよ。 この作品は、6才の主人公メイソンが、姉や離婚した両親ら家族とともにさまざまな経験を経て、18才で大学に入学するまでを描く映画だ。 この映画…
私たちは社会で生きていくために、他者に何かを働きかけなければならない。一人では生きていけないからこそ、自分が傷つき、他人を傷つけるリスクをも冒してなお、他者に何かを発信しなければならない。 読んでいる間、1巻からずっともやもやしてきたが、最…