「わたしの忘れ物」 乾 ルカ 著

「死んだ女より 悲しいのは 忘れられた女

大学で半ば無理やりに紹介された大型商業施設の忘れものセンターの期間限定バイト。
渋々働き始めた恵麻は、次々に持ち込まれる不思議な忘れ物と持ち主たちの「モノがたり」に触れ、次第に自分自身の大事な「忘れ物」に気づいていくのだか…。

「死んだ女より 悲しいのは 忘れられた女」

本書を読んで頭に浮かんだのはマリー・ローランサンの言葉だった。
何かを「忘れる」ということは、忘れられたモノにとっては自らの存在の意味を、支えを失ってしまうということなのかも知れない。
それは、とてもとても残酷なことだと思う。
廃校や廃墟、空き店舗や住民がいなくなった部屋などを見た時に感じる寒々しい気持ち、心細さ。

どのエピソードもドラマチックで意外性があり面白く読めたのだけれど、いかんせん「存在感がない」「ミス・セロファン」と繰り返し自嘲している主人公にどうしても好感が持てず、残念だった。
設定上、仕方ないのだけれど、最後まで都合良すぎな周囲の人々にも突っ込みを入れたくなる。
忘れられる悲しいモノたちの物語だからこそ、気持ちが明るくなる人が中心にいて欲しかったのだと思う。

わたしの忘れ物

わたしの忘れ物