「屋根裏の仏さま」 ジュリー・オオツカ 著

世界はたくさんのたくさんの異なる「わたしたち」で出来ている。どれもかけがえのない大切な「わたしたち」で。

写真だけを頼りに新世界アメリカに旅立った日本人の「写真花嫁」たち。
彼女たちを待っていたのは、写真とは似ても似つかぬ男性や、約束された住まいや仕事とはかけ離れた過酷な境遇、そして差別。
懐かしい故郷、母の元には、帰ろうにも帰れない。
ここで生きて行くしかないという諦めと覚悟を、今度は戦争が引き裂く。

一人称複数の「わたしたち」だけで書かれた物語に、ただただ圧倒される。
まるで詩のように、心地よく、さざ波のように繰り返すたくさんの「わたしたち」。
かつて確かに存在した私の同胞たち。
その手を取って慰めてあげたい同志たち。

最後に、日本人花嫁たちだけでない別の「わたしたち」が語り手となり、気づく。
世界はたくさんのたくさんの異なる「わたしたち」で出来ている。
どれもかけがえのない大切な「わたしたち」で。


屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

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