「ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ・Ⅱ」 ポール・オースター編

どの人にも、語るべき物語がある。

ラジオ番組で、ポール・オースターが全米のリスナーに彼の番組で読む実体験に基づいた短い物語を募集。
すると彼の元には4000を越すストーリーが寄せられた。
その中から選ばれた179の作品がこの文庫版のⅠ、Ⅱの2冊に収められている。
全てを読み終わると、まえがきにあったポール・オースターの言葉が胸に染みてきた。

私たちにはみな内なる人生がある。我々はみな、自分を世界の一部と感じつつ、世界から追放されていると感じてもいる。一人ひとりがみな、己の生の炎をたぎらせている。

本書に収められたさまざまな境遇にある人々の物語を読むと、こんなに混沌とした世界であっても、私たちの生活はバラバラに存在しているのではなく、人種や国境、性別、年齢などを超えた共通の基盤のようなもので繋がっているのかもしれない、と信じられる気がする。
だから本書に集められた物語は、それが「愛」についてであれ、「家族」についてであれ、「夢」についてであれ、どれもしごく個人的なものであると同時に、どこか普遍的なものであるかのように感じてしまうのだろう。
どの人にも語るべき物語がある。
だから人は一人ひとり誰もが尊重され、大切に扱われなければならない。
私たちは、その語りに耳をすまさなければならないのだと、そんなことを思った。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)