「今日のハチミツ、あしたの私」 寺地はるな 著
2年間同棲した安西に連れていかれた故郷で彼の父親に結婚を反対された碧。
彼女は、中学生の頃に偶然出会ったハチミツを手掛かりに、頼る人もいない場所で自分の居場所を求めて孤軍奮闘する。
食べ物をテーマにした小説はどれも好きだ。
登場人物が何かしら食べていてくれると、心底安心して先を読むことができる。
食べることは心の健康のバロメータだから。
拒食症に悩んだ碧の、どんな時も自分と、そして目の前の人にちゃんとしたものを作って食べさせようとする姿勢に共感を覚えた。
また和食、洋食どのメニューもハチミツが隠し味に加えられて香りも色も美味しそうで。
蜜蜂たちが懸命に集めた金色の恵みが、人間の寂しさや悲しみを癒す薬になる。
それは人間の毎日が、小さな自然の恵みによって支えられていることを再認識させてくれる。