「スウィングしなけりゃ意味がない」 佐藤 亜紀 著
これは第二次世界大戦の最中、ドイツ国内で権力に反抗し続けた若者たちを描く物語。
彼らの反抗の象徴はジャズ。
ジャズこそはナチスという圧力に対抗する手段、ナチスに迎合する大人たちへの面当て、若者を縛るルールからの自由、そして異国の人々との紐帯のシンボル。
主人公は金持ちの社長のぼんぼんエディ、友人で天才ピアニストのマックス、階級を超えたジャズ仲間クー、美女でもスマートでもないクラリネット吹きアディ、憧れの女性エヴァやいわゆる不良の仲間たち。
戦争は彼らを固く結びつけるが、一方でいとも簡単に引き離し、傷つけ、予期せぬ別れをもたらす。
そして、時にその別れは永遠のものとなる。
毎日のように顔を合わせていた仲間が、すれ違い、ふざけ合い、笑い合い、そしてそれぞれの戦いの場に散っていく。
それはまるで奏者が即興的に演奏するジャム・セッションのようだ。
そこに居た誰かが欠けても、その思い出は懐かしいメロディーとして彼らの胸には残るから。
若者だった彼らもやがて、敵を出し抜くには強い反抗心だけではなく、賢さが必要だと悟る。
いつまでも反抗的な子どものままではいられない。
これから新しいステージでまた彼らのジャズセッションは続くだろう。
けれどそれは決して前とは同じではない。
彼らの青春は終わった。
そして戦争も終わったけれど、誰も戦争前と同じではいられない。