「アルテミス」 アンディ・ウィアー 著

「火星の人」のテイストそのままに、次の舞台は月。
挑戦するなあ、著者。
重力が地球の1/6という環境で、まさに縦横無尽に飛び回る(文字通り)大活躍で月面都市アルテミスの危機を救うヒロインはジャズ・バシャラ。
優秀な頭脳を持ちながらも男を見る目のなさが祟り、父親に勘当され月面都市アルテミスの最下層で暮らす彼女が、科学知識やエンジニアとしてのセンスを活かして月面における殺人と陰謀の謎を解く!

あらすじもわくわくドキドキだけど、面白かったのは月面都市アルテミスの設定そのものにもある。
住民たちはいずれも多様な人種、国、宗教を持っており、それぞれに地球上のしきたりや仲間意識をちょっとずつ月世界にも持ち込んでいる。
そしてそれぞれの付き合い方、折り合い方がとてもスマート。
地球と同じく、お金持ちには天国だけど、逆の場合はそれなりに。
けれど才覚次第で稼ぐチャンスも転がっているというのは、新しい人類の開拓地ならでは。

それにしても、「火星の人」でもつくづく感じたが、宇宙空間ではかくも人間というのは弱く脆い存在なのか。
それでも人は宇宙を、新しい世界へ旅立つ未来を志向する。
だからこそ、人は多くの知識を学ばなければならないし、そしてさまざまな考え方を持つ他者と衝突せずに共存する知恵を学ばなければならないのだと考えさせられた。

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)