「暗黒少女」 秋吉理香子 著

二転三転する美少女の実像と一見美しく華麗なこの文学サークルの正体は、ラストですべて明らかになる…キャー!!


ある私立女子校の文学サークル定例会ーそこでは伝統に従って闇鍋が開催されている。
そして闇鍋を味わうと同時に行われるのは、部員6人による自作小説の朗読。
しかし異様な空気が漂うのは、会場が暗闇に包まれているからだけではない。
それは今回の小説のテーマが、一週間前に飛び降り自殺を図ったとされる前会長の白石いつみの事件だから。


この学校の経営者の娘であり、その美しさや聡明さで生徒たちの憧れであるいつみ。
彼女が創設し、父親にねだって特別な部室までしつらえた文学クラブ。
このクラブのメンバーは、初等部からのいつみの親友、澄川小百合といつみ自ら声をかけた6人の少女たち。
それぞれプロ作家、医学部を狙う理系女子、料理の腕前はプロ級、ブルガリアからの留学生、成績優秀な奨学生、など輝かしい才能と美しさに恵まれている。
彼女たちはレストラン並みに設備の整ったキッチン、華麗な調度品が揃ったリビングを備えたサロンで、紅茶とお菓子を食べながら文学について語りあうひとときを過ごす。
ところがその主役である部長、いつみを襲った一週間前の謎の転落事件。
次々に美しく聡明な部員たちが読み上げる作品、そこで彼女たちは各々いつみを殺した犯人として、別の部員の名を挙げ糾弾するのだが…。


定例会の司会を務めるいつみの親友である会長の小百合の上品でありながらどこか破綻している独白がじわじわと恐怖を煽る。
また、闇鍋というのが怖い。
互いに誰も信用できないメンバーたちがいったい何を持ってきたのか。
昨年の闇鍋ではシャネルの限定モデルの時計が入っていたらしいが…いやいや、そういうものではなく…。


二転三転するいつみという少女の実像と一見美しく華麗なこの文学サークルの本当の姿は、ラストですべて明らかになる…キャー!!
夏休みにふさわしい冷たい感触に満ちた作品だった。
あー美しい少女たちはみな残酷である。
と、美しくも華麗でも少女でもない私は安堵のため息をつくのである。


暗黒女子 (双葉文庫)

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