「ヤァヤァシスターズの聖なる秘密」 レベッカ・ウェルズ 著

母と娘をやるって難しい。だけど、人はおそらく「母親」から逃れることはできないんだ。子供を産んだ瞬間から母親であることを逃れることもできないんだ。


現在、海外にいる娘とケンカしている。
太平洋を隔てるこのケンカを、LINEを通じて見ていた息子に鼻息荒く、「どっちが間違ってると思う?!」と聞くと「んー、わりとどうでもいい」と言われたので、少し頭が冷えた。
頭が冷えて、ふと思い出したのが、この本。
あぁ初めて読んだ時、この本の主人公シッダは私だと思っていたけれど、私は母ヴィヴィの立場になっていたのだ。
いつの間に?


でも、ヴィヴィは私と違う。
ヴィヴィは子供の頃から美しく、頭の回転が早く、行動力がありヤァヤァシスターズという地元の仲良しグループのリーダー的存在だ。
4人の少女で作られたヤァヤァシスターズはアメリカ南部のルイジアナ州の町ソーントーンで、ヤァヤァな(イカしてる)日々を満喫している。
高校生の時には4人で風紀紊乱で逮捕され(笑)、ヘビースモーカー(ダイエットのために今は禁煙中)、70歳の今もイカす女性たちだ。


一方、娘、シッダは39歳。
舞台演出家としてようやく注目を浴び始め、私生活でも愛する男性と巡り会い、結婚を考え始めたところ。
しかしヴィヴィという些か存在感が強烈な母親に育てられた影響は彼女の中に良い面も悪い面も含めて大きく影を落としており、それがある事件をきっかけに爆発することになる。
そして、母親との確執が蘇り、不安定になったシッダは1人きりになり、母の過去、すなわちヤァヤァシスターズの過去を探求し始める。


ヤァヤァズたちの青春も、酒とタバコと笑いとパーティーばかりではない。
思うにまかせない人生の挫折はどんな人にも等しくやって来る。
女王ヴィヴィにだって。


「あたしの人生のエピソードは、あたしが自分で持って歩くの。あたしの名札がついてるんだから」

「あんたが持ち歩いている荷物はね、ベベ、精子卵子と出会った瞬間から、あんた一人のものではなくなったのよ」


ヴィヴィと親友ティーンシーとの会話には親子の哀しいさだめが簡潔に示されている。
なぜ人は父親の、または母親の過去を知りたいと思うのだろう、知る権利があるとおもうのだろう?
それは、それこそが自分というものを創り上げる一番大きな要素であると感じているから。
自分が生まれる道すじと必然を知り、そしてそれを卒業して新たな、より賢くより素晴らしい未来を築きたいと願うから。


うちの娘が小学5年生の頃、突然変な髪型で学校に行き始めた。
誰が見てもおかしな髪型だったので、夫や私が注意をしたのだが、それまで親のどんな注意にも素直に応じていた娘が頑固に髪型を変えようとしなかった。
中学生になった頃、アルバムを見ながら娘本人が自分の写真を見て「黒歴史」と言ったので、私も「なんでこんな髪していたのよ」と聞いたら、娘はちょっと考えてこう言った。
「あの頃、初めて分かったの。お母さんの言うことは全部正しいと思ってたんだけど、分かったの。お母さんも間違えるんだって。多分そう言いたかったんだと思う」


本当に、娘が早めに私を見限ってくれて良かった。
シッダの苦しみを見ているとそう思う。
そして願わくば学んで欲しい。
この世はマリア様の「欠点だらけの子どもたち」だらけであることを。
今回は私が折れてあげるから。


そして、キャロはシッダに視線を据えて言った。「あんたにもヤァヤァズの血が流れてるのよ、シダリー。気に入ろうと入るまいと。たしかに少々汚れてはいるけど、この世で汚れのないものなんて、あるかい?」


ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密

ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密