「ハンガー・ゲーム」1・2 上・下 スーザン・コリンズ 著

圧政と殺戮に満ちた絶望的な世界でのシンデレラストーリー。私はちょっと違和感が・・・年齢のせいかしら。



家族の強い勧めにより、一部、二部を一気読み。


小説の背景について説明をすると。
中央都市キャピタルが周囲の12の地区を従え、キャピタルに住む一部の富裕層が贅を尽くした生活をしながら12地区の民は貧困にあえいでいる。
彼らは搾取されている上に中央から派遣された兵たちに管理されており、反抗的な素振りが見られれば肉体的、経済的に痛めつけられたり場合によっては処刑される。
そして12地区への最大の見せしめが、年に一度開催されるハンガー・ゲーム
各地区の少年少女のうち男女1名ずつをくじで選出し、合計24名を仮想戦闘地で最後の1名になるまで戦わせ、それをキャピタルおよび全地区でTV放送するというイベント。
勝者は一生食べるに困らないだけの食糧と金銭、住居を与えられ、以降はハンガー・ゲーム出場者の教育係としての役目を果たすことになる。
主人公は炭鉱地区である12地区に住む少女カットニス。
彼女はくじで選出された幼い妹の身代わりに、今年のハンガー・ゲームに出場することになる。



映画の原作であり、作者は映画の制作にも参加しているということで映画の評判も確認して見たら、24人という限られた人数での生き残りをかけた殺し合いという設定に、予想通り某映画・小説との共通点を指摘するものが散見された。
確かに。
私自身は、タイプの違う魅力的な男性たちとの三角関係という設定から、別の某映画・小説を思い出した。
しかし、考えてみればそれらが魅力的な設定だからこそ複数の小説や映画に採用されたのだろうと思うので、私はカブっていること自体には不満は特にない。
むしろ、それだけ使い込まれた設定をここまでドラマチックにサスペンスフルに仕上げたことに感心している。
間違いなく面白い作品で、一部・二部通して一気に読んでしまった。


不満があるとしたら、ほとんどは主人公に対するもの。
彼女は狩の名手で、その弓の腕前はリスの目だけを射抜くというからにはかなりの腕前であろう。
その上、はっきり書かれてはいないのだけど、非常に魅力的な外観を持っているようだ。
おまけに歌声も人ばかりでなく、鳥すらも魅了する。
これらの自らの天性の才能に対して、彼女自身はひたすらに無自覚。
その上、彼女のために周囲の人々が危険を冒して助力を尽くしているのに、なかなか気づかない。
彼女を中心に周囲のすべてが動いて、人が生き死にしているのだけれど、残念ながらそれが本人には理解が及ばないようだ。


主人公になりきってしまうなら、とても面白い作品。
ハンガー・ゲームも意外性にあふれ感動的なシーンも多く、どの場面も息を抜けない。
そして今後はキャピタルの中央独裁政権との戦いへと発展するようで、それもまたワクワクする展開になりそうだ。
だけど脇役に関しては、魅力たっぷりにかかわらずなかなか気苦労が多く、その殆どは報われない。
圧政と殺戮に満ちた絶望的な世界でのシンデレラストーリー。
家族はかなり楽しめたようだが、私はちょっと違和感が・・・年齢のせいかしら。



ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)