「特捜部Q キジ殺し」 ユッシ・エズラ・オールスン 著

新メンバーを迎え、ますますハチャメチャぶりに磨きがかかる特捜部Q。カールの受難が続くシリーズ第2弾は20年前の解決済みのはずの事件の隠された真実を暴く。

特捜部Qの第2の事件はなんとも不思議な始まり方をする。
いつのまにやら、机の上に置かれた事件ファイル。
すでに犯人は収監され、判決も下されているはずの20年前の兄妹惨殺事件。
特捜部Qは未解決事件を扱う部署だから、なぜこんなファイルがこの部屋にあるのか、カールもアサドも分からない。

ところが事件関係者に話を聞くうちに、どうやらこれが単純な事件ではなく、実はあるグループによる連続暴行事件である可能性が浮上する。
相変わらずノリノリのアサドとは逆にイマイチ食指の動かないカール。
ところが、ある時から上司や官僚たちから特捜部Qの捜査を妨害する動きが。
ここで俄然やる気を出すカール。
妨害者たちは気の毒にも知らなかったのだ。
カールに何かをさせたかったら、猛烈にその何かをしてはいけないと禁止しなければいけない、ということを。

2人の捜査と同時に描かれる犯行グループの一員だったホームレス女性の逃亡と反撃。
前作でもそうだったのだが、作者は女性に対する洞察力に優れている。
(作者近影によるとちょっとマッチョな雰囲気なのだが)
女性ゆえの弱さ、強さ、哀しみ、喜び、残酷さ、温もり。
それらが混在した複雑な女性を、魅力的にかつ容赦なく描き出す。
1作目に続き、怒涛のラストまで読み応え十分に引っ張る。

本作では、特捜部Qに新たな仲間ローセを加え、カールがますます肩身が狭くなる。
モースやダルジールの場合、破天荒な上司に振り回される真面目な部下たちが見ものだったが、このシリーズの場合、上司もかなりワガママなのだが、部下たちが輪をかけてマイペースで、我を通す。
何時の間にやら、カールが2人に気を使っている様子がおかしい。
いや、あなたがボスだから。

今やなくてはならないパートナーであるアサドや、頭は切れるが時々キレる新アシスタントのローセにもなにやら秘密の匂いが。
そしてカールの逃げた女房ヴィガ、新しい恋人との関係はどうなるのか。
メンバーも揃って、ますます興味深い第2作目も、是非。

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)